左官について
2023年03月16日
お役立ち情報・コラム
左官工事を使ってみたいと思っていても、色々わからない事も多いのではないでしょうか。
近年の家づくりでは、施工しやすく、比較的コストもかからないサイディングやクロス等の乾式工法と呼ばれる仕上げが主流になってきています。
中でも、湿式工法の左官工事は、施工に時間もコストもかかりますが、重厚感や独特の存在感に根強い人気があります。
今回は、そんな左官工事の特徴と、代表的な仕上げの種類、選び方のポイントについてお伝えします。
左官工事ってなに?
左官工事とは、土やモルタル、プラスター、しっくい、繊維質等の材料をローラーやこてなどの道具を使って、内装や外装の床や壁、天井、基礎の表面などを塗り仕上げる工事です。
左官工事の仕上げは、材料や仕上げに使う道具によって様々な種類があります。
塗り重ねる回数や調合を変えることで、微妙な色合いの演出も可能です。
自然素材の場合や、機能性に優れた素材には、調湿性、保温性、防火性などの効果も期待できます。
左官工事の内容は、人の目につく仕上げだけではありません。
基礎の天端や基礎表面をモルタルで平滑にならしたり、RC造などのサッシ回りのモルタル詰め、タイル工事の下地づくりなどといった内容も含まれます。
いずれにしても左官工事を行うためには、知識と専門性と技術力が必要で、日本の伝統的な工法のひとつとしても挙げられる工法です。
左官仕上げの材料種類
内外装に使われる左官仕上げ材の代表的な種類と特徴をお伝えします。
漆喰
消石灰を原料として作られ、約1000年前から使われている伝統的な建築材料です。抗菌性があり、近年再注目を集めている素材です。
- お城や神社仏閣など歴史的建造物の内外装に使われている
- 基本は白く平滑な仕上がり
- 砂や顔料を混ぜることでさまざまな質感や色合いを表現できる
- 調湿性、耐火性、抗菌性、防カビ性に優れる
モルタル
水とセメントを原料として作られ、建築物のさまざまな部分で使われる材料です。
- 手軽に作れる
- 顔料を混ぜることでさまざまな色合いを作れる
- 個性的な黒モルタルも人気
- 仕上げ材としても下地材としても幅広く使われる
- 平滑に均すために高い技術が必要
- 幅広い仕上げに対応できる
珪藻土
珪藻という藻類の化石を主成分とした材料です。
- 昔から人々の暮らしに寄り沿い、生活用品として使われてきた
- カラーバリエーションが豊富
- 調湿性、消臭性、耐火性に優れる
- 自力で固まることができないため、つなぎ材が含まれる
- 自然派素材ではあるが、つなぎ材として人工物が使われる場合がある
- 平滑な仕上げもできる
- 汚れが浸みやすい
ジョリパット
アクリル樹脂を主成分とした材料で、施工性のよさと豊富な実績で人気を集めています。
- 内外装幅広く使われる
- 耐候性、調湿性、耐久性、不燃性、抗菌性に優れる
- ひび割れにも強い
- 豊富なカラーバリエーション
- 調合してオリジナルの色を作ることもできる
- 汚れがつきやすいものもある
土壁
上塗りの土の種類によって、「錆砂壁」や、京都の一部地域でのみとれる聚楽(じゅらく)土を原料とした「じゅらく壁」や石灰に色土とすさを混ぜた「大津壁」と名前が変わります。珪藻土も土壁に含まれます。
- 調合によってさまざまな色合いを表現できる
- 調湿性、防火性、吸音性、消臭性、断熱性に優れる
- 日本の風土に適している
- ひび割れが起きることがある
- 工期がかかる
左官仕上げの種類と特徴
内外装に使われる左官仕上げの代表的な種類と特徴をお伝えします。
刷毛引き仕上げ
仕上げ用に塗りつけた材料の表面が柔らかいうちに、刷毛を当てて水平に真っ直ぐ線を引き、刷毛の跡をつける仕上げ方法です。
刷毛にも様々な種類があるため、使う道具によって仕上がりパターンを変えることができます。
金鏝押さえ
木鏝で均一にした材料の表面を、金鏝で強く押さえる仕上げ方法です。滑らかに仕上げるためには、高度な技術が必要になります。
鏝波仕上げ
鏝で仕上げを塗った跡を、ランダムに自然な形で残す仕上げ方法です。鏝を押さえる強さや、当て方によって様々な表情を楽しむことができます。
扇仕上げ
鏝で扇形を描くように仕上げる方法です。
魚のうろこのような規則正しく連続した仕上がりや、ランダムに扇形を配置した仕上がりなどお好みによってテクスチャーを変えることができます。
掻き落とし
仕上げ材が堅くなった頃合いに、鏝や金くしやブラシなどで引っ掻くようにして、表面をムラなく掻き落とす仕上げ方法です。
自然な風合いと、落ち着いた質感を表現することができます。
スタッコ
仕上げ材を鏝で塗りつけた後、専用器具や木鏝で引き起こし、表面が硬化した頃合いに凸部を鏝で押さえて、軽く潰す仕上げ方法です。
大柄でダイナミックながらも落ち着いた風合いのあるテクスチャーです。
磨き仕上げ
何度も塗り重ねを行い、鏝や手擦りなどの方法で丹念に表面を磨き上げる仕上げです。
手間と技術力、日数を要しますが、とても美しく深みがあり、個性的な仕上がりになります。
土壁の大津壁に施される「大津磨き」は最高級の左官仕上げとも言われています。
ローラー仕上げ
ローラーを使って平面に材料を塗りつける方法です。ローラーの当て方や、その種類によって様々な表情を作ることができます。
スポンジローラーを用いたスチップル仕上げが最も一般的な仕上げ方法で、塗装の表面に細かい凹凸模様ができるシンプルな質感の仕上げになります。
吹付け仕上げ
吹付け機によっては塗材を粒状や霧状にして仕上げる方法です。
仕上げの材料や、使用する吹付け器具によって質感を変えることができます。
周辺に飛び散りが発生しますので、丁寧な養生が必要になります。
砂壁状の模様を表現した、ゆず肌状、リシン、吹き付けタイルなどのテクスチャーが人気で、比較的安価ながらも高級感のある仕上がりになります。
左官仕上げ選び方のポイント
左官仕上げの材料や、仕上げの種類の選び方のポイントをお伝えします。
イメージを膨らませて選ぶ
左官で仕上げられる内外装は、とても趣があり、個性的な仕上がりになります。種類や色合いが豊富で、使う材料や仕上げ方によって、和風にも洋風にもなります。
施主の立場で、何の材料の何仕上げにするか?ということを指定するのはとても難しいことです。
まずはどのようなイメージに仕上げたいのか、イメージを膨らませましょう。
素敵だと思った実際の建物の写真や、施工例の画像などを設計者と共有すると、お好みの仕上がりを実現しやすくなります。
機能性から選ぶ
左官材料は、そのほとんどが優れた機能性を持ち合わせています。
その上で内外装幅広く使える材料がほとんどですが、使う部屋や場所の用途によって、適した機能性のあるものを選ぶといいでしょう。
例えば、玄関やトイレには、消臭機能の強い漆喰や珪藻土。人が多く集まるリビングには、耐久性に優れたジョリパット。など、部屋の特徴や使い方に合わせて選べるといいですね。
予算を考えて選ぶ
最近の家づくりでは、内外装ともに「乾式工法」と呼ばれるサイディングや、クロスの施工が主流になっています。
安く、短い工期で済むためです。
左官工事は「湿式工法」と呼ばれ、「乾式工法」の倍以上の予算が必要になることもあります。
予算を絞った上で左官仕上げを取り入れたい際には、壁面の一部だけに取り入れてアクセントにする、トイレや洗面室など、比較的せまい空間に取り入れるなど、工夫してもいいでしょう。
実物サンプルを確認する
左官工事の仕上がりは、カタログや画像で確認することもできますが、必ず実物サンプルを取り寄せて検討しましょう。
実物サンプルは、触れてみたり、光をあててみたり、床の色と合わせたり、引っ掻いてみたり、汚して掃除してみたり、いろいろな角度から強さや美しさを確認してください。
左官仕上げのサンプルは、建設会社に依頼すると、大抵の場合実際に工事を行う左官職人が作ってくれます。
仕事の腕前も確認できますよ。
左官工事とは何なのか?ということから、特徴や選び方のポイントまでお伝えしました。
左官工事は、乾式工法に比べて手間のかかる工事にはなりますが、独特の存在感や高級感は比較できないものがあります。
家作りに左官仕上げを取り入れる際は、予算とお好みの合ったものを選べるといいですね。
この記事の筆者
住まいる工務店
「住まいる工務店」は、業界歴15年、住宅リフォーム工事を中心とした各種内外装リフォーム全般(塗装工事/外壁工事/屋根工事/水廻り改修/室内リフォーム/設備機器交換/エクステリア/不用品処分/他)を行っております。親切丁寧をモットーに、小さな修理から大規模な改修まで、住まいに関するお悩みに寄り添います。快適な暮らしを支える住環境のパートナーとして、末長くお付き合いさせていただけたらと思います。従業員一同、感謝の気持ちを胸に、日々の業務に取り組んでいます。
保有資格:1級建築施工管理技士/1級塗装技能士/リフォームスタイリスト/雨漏れ診断士